「米中枢同時テロ」に対する「日本」





 東京都世田谷区  寺田 勉







小泉首相は、九月二十五日午前、ホワイトハウスでブッシュ大統領と首脳会談を行った時、「武力行使はできないが、米国を強く支持し、日本として主体的に最大限の支援と協力を行う」と表明した。

そして、自衛隊による医療、輸送、補給などの支援活動を可能にするための「米軍等支援法案(仮称)」を二十七日招集の臨時国会に提出し、早期成立を目指すなどの七項目の措置を説明した。

それが日本の最大限の支援表明であり、ブッシュ大統領が来日する十月中旬までに成立のメドをつけたいと考えていた。

これに対して大統領は、「戦闘に参加しないことが、同盟国としての価値を下げるものではない」と理解を示したような発言をしたが、内心、全面的協力なしでは頼るに足りないと察し、十月中旬に訪日するのはムダなことだと中止した。

つまり、日本が後方支援で、言葉もろくに通じなくてもたもた(・・・・)するのは、米軍としてはかえって足手まといなのである。

事後の難民支援にしても、日本よりは他国の方がスムーズにいくと思われるのである。







日本はいたずらに憲法にこだわりすぎて、身動きがとれないでいると、世界から取り残されてしまう。「日本が戦争を放棄しても、戦争は日本を放棄しない」のである。

その国の憲法は、何も神がつくったものでもなく、その時代の流れに即して人間がつくり替えるものである。

それを、馬鹿の一つ覚えで、日本は明治時代の憲法を後生大事に守って、昭和になり軍部が台頭してきた時に、速やかに憲法を改正して「軍部は一切政治に関与すべからず」の一行を書き添えなかったために、太平洋戦争に突入してしまったのである。

今回も、時代に即してすでに憲法を改正しておれば、「米中枢の同時テロ」に遭遇しても、何もあわてふためく必要はなかったのである。







我国の自衛隊は、今や戦前より立派な軍隊であり、世界各国が認めていることである。それを、海部内閣当時の一九九一年の湾岸戦争の際、日本は同盟国の米軍を中心とする多国籍軍への人的貢献を拒み、金だけですませたので、「日本は血も汗も流さない」と、国際社会から大いに批判された。

今回も、各国がテロリストとの対決を鮮明にしているのに、米軍支援に自衛隊を出し渋り、成金根性で金さえ出せばよいと考え、優柔不断で口先だけで体裁のよい事を並べても、日本は再び国際社会から孤立し、首相が掲げる「日米同盟」は空念仏で終わることになる。

日本がアメリカの真の同盟国なら、いち早く自衛隊を派遣し、アメリカ軍の傘下として協力すべきである。後方だけの援助では、それこそクソの役にも立たないだろう。







今回のテロ戦争によって、世界は核戦争へと発展する可能性がある。

国のためにあえて自爆をいとわない兵は、何も日本兵だけではない。イスラム教徒のテロの実行者たちは、自らの命を犠牲にできる価値観を持っている。それは、イスラム教徒全員にも言えることである。

核兵器を抱えた飛行機、オートバイ、自動車などが、何時どこから飛びこんで来るかわからない御時勢である。捕虜になることを最高の名誉としているアメリカにとっては、最大の恐怖である。




  元 大津陸軍病院








平成13年10月25日 戦友連393号より


【戦友連】 論文集