靖國神社公式参拝に反対する
すべての政治家の皆様へ




まず最初に確認します。「戦争によって命を落とした犠牲者の霊を慰霊しなければならない」という点には、異存はありませんね。・・・では国のために戦って死んだ人、つまり「戦死者」についてはどうですか?。恐らく「侵略戦争の加担者、つまり加害者は悪である」という主張なのでしょうね。

「戦死者」を祀り慰霊する事は世界の常識です。しかし、靖國神社参拝については「A級戦犯を祀っている所などとんでもない」とおっしゃるのでしょう。でも少し考えてみて下さい。

仮にあなた達の主張を百パーセント認めて、彼等は「悪人」だったとしましょう。あくまで仮の話ですが、仮にそうであったとしても、彼等の死後の安息まで奪うべきだとお考えなのでしょうか?。






仮にあなたが検事だとします。被告に対して死刑を求刑し、被告本人も潔くその罪を認めて、被告は死刑になりました。当然墓が作られます。罪を犯したとは言え、その罪を死を以て償ったのだから、検事が一私人としてその死刑囚の墓に詣でる事は、何の問題もないはずです。ここで、被害者の遺族が次のように言ったらどうしますか?

「お前は何故死刑囚の墓にお参りなんかするんだ、あいつは罪人だぞ」

「検事として行くのか?一私人として行くのか?検事として行くのなら、お前はあの罪人の罪を罪だと思っていないんだな」「墓を作る事自体遺族として不愉快だ、そんなものは壊してしまえ!」

もしあなたがこの検事の立場なら、こうした主張に賛成しますか?

普通の日本人なら、こういう考え方をしないはずです。しかし中国と韓国の主張は、まさにこの「遺族の弁」と同じなのです。






極めて言いにくい事ですが、ここではっきり言わせて頂きます。日本の政治家、特にあなた方のような主張をする方々は、歴史に対して余りにも勉強不足です。例えば歴史教科書問題を批判するのなら、せめて韓国・中国の歴史教科書を読んでからするべきです。当然公正な立場での勉強が必要です。あなた方はその努力いや義務を怠っています。

あなた方は「軍国主義絶対反対」とおっしゃる。私も全く賛成です。しかし、それならば日・中・韓の教科書を比較して「どれが一番軍国主義的か」という問題意識がなければなりません。あなた方はこの作業をしていないでしょう。「第三国」の人に「審判」してもらえば良いのですが、突出して軍国主義的なのは中国で、国家主義という点では韓国がそれに次ぐ、というのは明らかな事実です。

それに、彼等の教科書は戦前の日本と同じ「国定教科書」ですよ。国定教科書の欠点は御存じの通り、政府見解つまり一方的に自国にとって都合のいい内容の「大本営発表」の羅列になる事でしょう。中国も韓国も、そんな一方的な教科書によって育てられた人間が、他人の国の文化に、まさに内政干渉そのもののイチャモンをつけて来ているのです。






靖國問題は、実は文化の問題なのです。中国・韓国という儒教文化圏では、先の「遺族の弁」のような主張は非常識ではないのです。中国では、戦争に勝った側が負けた側の人間の墓を暴いて遺体に凌辱を加えるなんて事は、王朝の交替時にはよくある事なのです。前の王朝はすべて悪であり、悪だから滅ぼしたのだ。だから新王朝は正しいのだ、と言うのが「中国史のかたち」なのです。そして、悪人(つまり前王朝の支配者)は一切祀る事を許されず、墓や祠があれば徹底的に破壊する、というのが彼等の文化なのです。中国・韓国の文化つまり儒教文化は「死者に鞭打つ」文化で、「悪」と決めつけた者には死んだあとの慰霊すら決して認めない文化なのです。

彼等自身が、同じ国の人間に対してそういう態度を取るのは彼等自身の問題であり、軽々しい批判は慎むべきです。しかし、だからこそ、彼等の文化に我々が迎合する必要は全くありません。それぞれ違う文化を持った国であり民族なのですから、まして自己の属する文化の価値観を一方的に押し付けるような行為、例えば「総理の公式参拝中止」や「A級戦犯合祀に対する異議」等は、従う必要は全くない事です。

我が国には「死者は善悪を問わず全て慰霊すべきだ」という伝統があります。具体例を一々あげなくても、日本が「死者に鞭打つ文化の国でない」事は、充分お分かりになっていると思います。






民間の宗教団体である靖國神社に「分祀」等と政治家が言っていいんですか。それは、創価学会に「日蓮を信仰対象から外せ」と言うのと同じで、信教の自由に対する重大な侵害行為です。「A級戦犯」の人達も、七人が死刑に処せられる等既に罪を償っています。そう考えるのが日本の伝統で、「罪人は永久に罪人」という彼等の考え方と明らかに違うのです。あなた方は韓国・中国の「死者に鞭打つ文化」に、なぜ迎合しなければならないのですか?

(注) この記事は『SAPIO』276号の井沢元彦氏の論文の要約です。

歴史を正しく伝える会 岡山 西川晃男(平成13年7月)






平成14年3月25日 戦友連398号より


【戦友連】 論文集