第33回全国戦友連総会
靖國神社に代る慰霊施設絶対反対
― 最終総会の感傷はなく ―
― 来年以降の活動を誓いあう ―



戦友連最後の総会である第33回総会は、予定通り去る4月19日、偕行社において開催された。この日相集う戦友は百名(昨年と全く同数)、張り詰めた熱気の中、重要議案に真摯に取り組み、極めて意義ある総会であった。

総会は定刻13時、長谷川光一郎常任理事の司会により、先ず靖國の英霊に黙祷を捧げ、つづいて国家斉唱でその幕を開けた。冒頭行われた西田会長の挨拶要旨は次の通り。




会長挨拶(要旨)



本日はかくも多くのご出席をいただき、まことにありがとうございます。特に本日は、我々の上部団体である『英霊にこたえる会』の会長・堀江正夫様のご出席を頂いており、厚く御礼を申し上げます。

実は堀江様には、来賓としてご出席をいただいただけでなく、別にお願いしたことがございます。

皆様、お手元にお配りした資料のトップ、総会次第の(6)の所をご覧下さい。表彰という項目があります

この表彰は『英霊にこたえる会』がかねがね私共戦友連の長年の広報活動、靖國神社境内や街頭で実施して来た広報活動を高く嘉賞くだされ、表彰状をいただくことになったわけでございます。私共戦友連は協議の結果、三名の方を推薦しまして、本日この会場で表彰をして頂くことになり、堀江会長様はその授与のためにおいで頂いたわけでございます。

この件については、後ほど『表彰』の所で私から堀江様の略歴を紹介申し上げ、堀江会長様の御挨拶を頂くことになっておりますので、よろしくお願い申し上げます。





さて、本論に入りますが、簡単に三つのことを申し上げたいと思います。

その一つは、昨年来実施した靖國募金の事であります。私は大成功だったと思っております。誠にありがとうございました。

私は過去に五回募金を実施した経験がございます。その中で一番募金対象が大きかったのは、ビルマ方面軍関係の遺骨収集のための募金(昭和49年)でした。目標額6千万円で9千5百万円集まりました。

今回は募金目標額1千万円で、募金対象は全戦域の戦友です。目標額が少なく、募金対象範囲が広いのですから、一見容易に思われるかも知れませんが、私は今回が最も緊張しました。と申しますのは、対象範囲が広いということは、募金者と応募側の繋がりの密度が薄いということです。それにもう一つ、戦友の高齢化により、各戦友会の会勢が極度に低下していること、この二つが気になったからです。

ところが結果は、目標を約二割超過する好結果でした。これ偏に皆様方の熱い思いの結集でありまして、感謝にたえません。

なお、今度の募金は非常に後味の良い、爽やかな募金でありました。私は会報の『靖國募金経過報告』の中で、折に触れて何度かお願いや希望事項を申し上げましたが、そのご返事は、言葉では有りませんでしたが、募金のお金の入り方でよくわかりました。そして、皆様方が私ども募金執行部を信頼して下さっていることを強く感じ、感激した次第であります。誠にありがとうございました。





次に申し上げたいことは、愈々最後の年となった今年のことです。

私は基本的には、戦友連は今までも年々精一杯頑張ってきたのですから、今年も今まで通り正々粛々と広報活動を進めて行けば良いと思っております。しかし今、靖國問題には由々しき事態が発生しております。

それは、昨年8月13日の小泉総理の靖國神社参拝以来持ち上がった、「靖國神社に代る国立の慰霊施設」建設の問題です。これは今、福田官房長官の諮問機関である『懇談会』で審議が進められておりますが、そのホームページによる速報を見ても、「始めに結論ありき」の感を益々強くするばかりです。

私は、この問題はもう小泉総理の思いを変えさせる以外に方法はないと思っております。それには戦友連単独の力では駄目です。英霊にこたえる会や、日本会議等の主導のもと、結束した大きな行動を起こさなければなりません。

その時には、戦友連は率先して活動に参加したいと考えておりますので、ご協力をお願い致します。





次に申し上げたいことは、戦友連が無くなった来年以降のことです。唯今申し上げたとおり、靖國問題を取り巻く情勢は、まだまだ我々の引退を許しません。とは言っても、戦友連はなくなるのですから、これからは私の私見として、参考までに申し上げます。

「我々は戦友連解散後も活動をつづける」と言っても、個人個人ばらばらでは活動しにくく、又成果も上りません。そこで私は、東京近在の方は「英霊にこたえる会」のもとに結集し、「英会」直属の実動部隊、実兵として活動するのがよいのではないかと思います。これならば従来の靖國境内での広報活動も実施できますし、デモ行進等の行動にも参加出来ます。

もう一つ忘れてならないのは、インターネットを利用する広報活動です。これからの時代、特に若い世代を対象に考える場合、戦友連のホームページは何らかの形で続けてきたいと思っております。

幸い現在は、伴尚志さんとおっしゃる若い方のご協力で、もう一年近くもつづけられておりますが、私はこういう若い同志の方々を支援することによって、この運動を若い世代に引き継いでもらい、若い者同士で輪を広げて頂けるようになれば有難いと考えております。

以上、甚だ雑な話になりましたが、これをもちまして私の挨拶を終わります。

以上








会長挨拶につづいて、司会より来賓並びに各戦友会出席者の紹介があり、次いで表彰式に移る。

表彰に先立ち、西田会長より堀江「英会」会長の略歴紹介があり、また堀江会長より、日頃の戦友連の活動に対するお褒めの言葉を頂いた。




英霊にこたえる会

会長 堀江正夫様 の略歴


昭和12年 陸軍士官学校(50期生)
昭和18年 陸軍大学校卒業
大東亜戦争では第18軍参謀として
ニューギニア戦線に従軍中、終戦を迎えた
昭和25年6月 朝鮮動乱勃発
同年   8月 警察予備隊令が公布される
昭和27年 警察予備隊に入隊
尓後自衛隊の各要職を歴任
昭和48年 西部方面総監を最後に退官
昭和52年より 参議院議員として2期12年間活躍
平成元年 日本郷友連盟会長
平成8年 英霊にこたえる会会長
現在に至る


表彰式では、堀江会長より下記の三名に表彰状が授与された。(年令順・敬称略)

加 藤  又 一  祭五一友の会

松 下  金三郎  飛八会

佐 藤  友 治  歩五八会







次いで「英会」運営委員長の来賓祝辞を頂き、その後、恒例により西田会長を議長に選出して議案の審議に入る。議案は、

第一議案「平成13年度活動報告」
第二議案「平成13年度決算報告及び監査報告」
第三議案「平成14年度活動計画」
第四議案「平成14年度役員改選」
の四議案であったが、いずれも原案どおり可決された。紙面の都合もあり、また『靖國募金』については既に前号(398号)で最終報告が終わっておるので、ここでは第三議案についてのみ、その要点に要約説明を加えてみたい。




平成14年度の活動計画



平成14年度の活動計画において提案されたことは、要約すれば次の三点である。

一、「国立慰霊施設」新設構想の絶対阻止。

二、「総理の靖國神社参拝定着」は当面の目標であり、もとよりこれが実現には従来通り懸命の精進を続けるが、究極の悲願は「靖國神社の国家祭祀」であることを再確認する。

三、そのためには、どんな方法があるか。あらゆる可能性を思索する。

以下、各項目について補足する。




第一項 「国立慰霊施設」新設構想の絶対阻止について



本問題については、昨年6月の国会において議論されて以来、その事の重大性に鑑み、戦友連では会報7月号から毎号かなりのページを割いて絶対阻止を訴え続けてきた。

又、この問題の諮問機関として福田官房長官のもとに設けられた『追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会』についても、そのホームページの議事速報により、その動向に注意してきた。

その結果得たことは、この懇談会は「始めに結論ありき」の政府の意図を実現させるための「隠れみの」と言うほかない。小泉総理、福田官房長官の腹は、靖國神社とは別個の「国立慰霊施設」を新設することに固まっておること間違いなしということである。

このことは、懇談会の運営を主宰している山崎座長代理が、第三回会合の締めくくりで語った次の言葉が如実に示している。

「・・・問題は、我々が政府を支持しているとすれば、政府が考えられる上で武器となるような論理をセットして提出すればよいのだと私は考えている」

以上、靖國問題は今までにない窮地に陥っている。これを打ち破るには、一日も早く同憂の団体が大同団結し、小泉総理の猛省を促す行動を起こすことが必要であろう。




第二項 「総理の靖國神社参拝定着」は当面の目標、
究極の悲願は「靖國神社の国家祭祀」であることの再確認



今年の4月28日は、わが国がサンフランシスコ講和条約の発効によって主権独立を回復してから満五十年の記念すべき日である。国内発外圧利用の左翼反日勢力の動きは依然として跡を絶たないが、米中関係の変化から、中国の日本に対する政策も変化の兆しを見せていることも事実。小泉総理は自己の信念に忠実に靖國に参拝し、英霊に追悼と感謝の誠を捧げてほしい。問題は、如何にして本来の姿である「国家祭祀」まで引き上げるかであるが、これからが真剣勝負、しかも長期戦を覚悟しなければならない。




第三項 「そのためには、どんな具体的方法があるか」



戦友連は本年末で解散することを決定しているが、愈々その現実に直面した今、来年以降を如何に行動するか、戦友諸兄は大いに懸念しておられることであろう。そこで私の日頃考えていることの一端を、参考までに披露する。

まずは明るい見方

1 中国(中華人民共和国)は果たして10年後も現在の共産党独裁政権が続いているだろうか。

2 衣食満ち足りて礼節を失った日本は、不況の深化によって礼節の尊さを取り戻す。

3 一旦緩急国難に遭遇すれば、アメリカのテロ事件での熱狂的愛国心にも負けない愛国心が日本人のDNAの中に無意識的に存在していることを信じる。

さて、それでは具体的にどんな方法があるか、思考を巡らせてみよう。







1 「英会」の広報活動に参加する

英会の靖國境内における広報活動は、当分つづけられる。現場のリーダーも、現在活動に参加中の日本青年遺骨収集団、英会有志会、日本会議の若年層からの人選が進められており、若い人は若い人の関心を呼び自然増が期待され、老戦友からの時機に応じたアドバイスは、活動の活性化に寄与すること間違いない。


2 居住地域の各種団体に加入し、身近な所で啓蒙活動する。

その類型としては、(イ)町内会・同好クラブ・教育委員会等地域密着型(ロ)軍恩・郷友連・傷痍軍人会・遺族会・偕行社・水交会等の旧軍関係型(ハ)日本会議・新しい教科書をつくる会・世論の会等世論リード型(ニ)政治団体・宗教団体等政治参加直接型。


3 時局戦略懇談会のメンバーの一員となり、アクティブな実践行動の一翼を担う。

(この会は平成7年の国会謝罪決議反対国民大集会・同8年の教科書の訂正を求める緊急集会・同11年のご親拝の道を拓く日の丸大行進等、時宜に応じた陳情、デモ行進等の企画、実行の推進グループ)


4 国民新聞、戦中派、月曜評論、全貌、遺烈等ミニコミ紙の購読者となり、為し得れば、広告賛助などにより資金援助する。


5 オピニオン誌(正論・諸君・ボイス・サピオ・明日への選択等)の定期購読者となり、 読者欄、編集者とのやりとりを通じて世論の喚起に寄与する。


6 「総理への提言FAX」への執拗な投書の励行。
FAX番号 03-3581-3883


7 戦友連インターネット・ホームページへの資料提供並びに資金援助。

戦友連のホームページは、解散後も有志によって運営される予定であるが、細部は未定。なるべく早く具体案をまとめたい。







以上、思いつくままにその在り方を列挙したが、要は戦没戦友の志を心として、英霊の名誉回復の実現、歴史の真実を後世に伝承する啓蒙運動こそ、新世紀まで生き残された生存戦友に託された唯一の使命と心得、百万人といえども我行かんの気概をもって、老骨に鞭打って悲願達成に邁進することである。

それには、我々は元気に生き続けなければならない。諸友諸兄の益々のご健勝を祈念して、結びの言葉といたしたい。




(文責・副会長  佐藤 博志)








平成14年4月25日 戦友連399号より


【戦友連】 論文集