34年の活動を締め括る
戦友連最後の大会整斉淡々と終る







心配されていた天候も、英霊のお加護により雲一つない秋晴れに恵まれ、全国各地より馳せ参じた戦友並びに協力者二百数十名、戦友連隊籏を(なび)かせて、去る十月三十日十二時二十分、定刻五分前に靖國神社神門前に隊伍を正す。

やがて進軍喇叭とともに行進開始、神官の誘導により南行幸門より中庭に参進、本殿に正対して整列、戦友連最後の部隊参拝を行う。

嚠喨たる喇叭の音「国の鎮め」に、戦の庭に斃れし戦友の雄姿が彷彿として感動も一入(ひとしお)御霊(みたま)永久(とわ)に安かれと祈念して拝礼、第一部の式典を滞りなく斉行して、大会会場である靖國会館に移動する。







第二部大会は、湯澤宮司御臨席の下、国歌斉唱の後、十三時やや過ぎ、佐藤実行委員長司会で開会。

先ず、礼服に威儀を正した西田会長、壇上に立ち挨拶(挨拶要旨後掲)。次いで湯澤宮司の声涙ともに下るご挨拶に場内しばし感涙に咽ぶ。続いて「英会」堀江会長並びに同中央本部倉林運営委員長、両来賓のご挨拶を頂く。

終わって佐藤副会長より「今後の運動の在り方」について説明があり、又後継者である「日本青年遺骨収集団」赤木衛代表及び「戦友連」ホームページ管理者伴尚志氏を紹介する。理路整然と憂国の至情を訴える赤木代表の言葉に、良き後継者を得たりと会場の共感を呼ぶ。







かくして大会は、十四時定刻をややオーバーして終了。小憩後第三部直会・懇親会に移る。日の丸歌手・寿川有里さんの登場で、会場は忽ち歓談の坩堝(るつぼ)と一変。十五時半、名残を惜しみつつ散会した。






会長挨拶要旨




全国戦友会連合会会長の西田でございます。唯今は雲一つない日本晴れの青空の下、皆様と一緒に滞りなく部隊参拝が出来まして、誠にありがとうございます。私はあの青空を仰いで、ご英霊は喜んでくださっているのだなと、嬉しく思いました。







さて、本日は予想を上回るご出席を頂き、又ご来賓として靖國神社の湯澤宮司様、および我々の上部団体である「英霊にこたえる会」の堀江会長様、同倉林運営委員長様のご出席を頂き、誠にありがとうございます。

特に靖國神社さんに対しましては、本日は戦友連最後の大会でございますので、本日のことだけでなく、過去34年間のご支援に対し、お礼を申し上げなければならないと思っております。

ご承知のとおり私どもの団体は、「靖國神社を国の手で祀って貰いたい」という(ただ)一つの願いのために結集した団体であります。

従って私どもの運動は、靖國神社の境内を使わせて頂くことが非常に多かったのでありますが、靖國神社さんはいつも心よく私どもの我儘をお許し頂き、ご支援を頂きました。

私は、私どもが三十四年間、靖國問題の広報活動を続けて来ることが出来ましたのは、この靖國神社さんの陰のご支援が有ったからだったと思っております。この席をお借りして、皆様と一緒に厚く御礼を申し上げたいと思います。

宮司様、誠にありがとうございました。







次に話は変わりますが、戦友連三十四年の運営を顧みて、一言(ひとこと)申し上げたいことがございます。

戦友連には、会設立の当初に定められた、二つの運営基本方針とも言うべきものがございます。

一つは「実兵主義」、戦友連は何事も実兵として働こうということ。二つは「手弁当主義」、戦友連は何事も、身銭を切って働こうということ、この二つであります。そしてそのためには、本部はガラス張り、特に金銭に関することは透明潔白を守ることが大切だということでした。

私は今顧みて、この基本方針は三十四年間、守りとおされたと思っております。そして、だからこそ戦友連は三十四年間、外部から一銭の援助を受けることなく、自力で続けることが出来たのだと思っております。又私は、かかる団体は戦友の団体だからこそ出来たことで、後世の史家は、これを「昭和時代の特異な存在」として興味を持つのではないかと思っております。これ(ひとえ)に会員皆様方の戦友愛の結果でありまして、敬意と熱い誇りを禁じ得ません。

(ちなみ)に戦友連におけましては、戦友連会報の全部、一号から四〇七号までを四分冊の合本に製本し、国会図書館と靖國偕行文庫に保管して頂くよう、準備を進めておることを報告申し上げます。







さて、これからも申し上げることは、今後どうするかということです。これは非常に大切なことです。

では何をやればいいのか?

私は、基本的には、戦友連は無くなっても靖國問題は生命(いのち)のつづく限りやらねばならないと思っております。そして、齢はとっても身体の元気な者は広報活動に参加し、身体に自信がない者はお金を出して運動を支援する等、やれることは多いと思っております。私はここで、身近かな一例を申し上げてご参考に供したいと思います。

皆様ご承知のとおり、靖國神社では今年の七月、遊就館が全面的に増改築され、すっかり近代化されたすばらしい近現代史館として開館しました。そして拝観者は増え、特に若いものには分かり易いと言って人気が高いそうであります。

だが良い事ばかりではありません。世の中、今は不況のどん底で、工事資金は思うように集まらず、宮司さんの前で大変失礼な話になりますが、まだ二十億円も足らないと漏れ承っております。

これは私は、単に不況の斉だけではないと思います。靖國神社に最も縁の深いご遺族や戦友が、今どんどん死んでいることが、もう一つの大きな原因ではないでしょうか。従って、年月の経過とともに事態が更に悪化するということも予想されるわけであります。

そこで私の提案ですが、私たちは第一に、自分は行けなくても、若い世代、特に二十歳代までの若者に、遊就館へ行くよう勧める努力を致しましょう。

第二にはお金、靖國神社に寄付を致しましょう。一度に五十万、百万は出来なくても、例え三万、五万でも、こつこつと年に何回も奉納すれば「塵もつもれば・・・」の諺どおり、きっと靖國神社のお役にたつと思います。ぜひ実行頂きたいと思います。







最後にもう一つ、お願いを申し上げます。それは、皆さん長生きしてくださいということです。

皆様ご承知のとおり、伝統というものは、一度断絶すると復旧は極めて困難です。

これは一般論ですが、私は、今の日本をリードしている五十代、六十代は駄目だと思っております。東京裁判史観が頭に染み込んでいるからです。ですから期待するのは四十歳代以下の若い世代、特にまだ染まっていない十代、二十代の若者です。ところが、その若い世代に申し継ぐ前に、我々世代が死んだのでは、伝統の継承は出来ません。

そこで皆様、我々の生命(いのち)は自分のものであって自分のものではないということを自覚なされ、何としても長生きをされますよう、最後のお願いを申し上げまして、私の挨拶を終ります。




(注)
 会長の挨拶にあります靖國神社への奉賛金奉納について、払込用紙を希望の方は、靖國神社(03-3261-8326)へ直接申し込んでください。
 但し戦友連解散(12月末)までは、戦友連本部でも右払込用紙の送付を致しますので、本部(03-3552-9731)へ電話で申し込んでください。





平成14年11月25日 戦友連406号より


【戦友連】 論文集